Epilogue of Body Earth身体の再発見

20世紀科学は、マックス・プランクの量子とアインシュタインの相対性理論で幕を開けました。以来、50年以上にわたって先端科学の主役の座は、素粒子と宇宙であり続けます。前世紀の後半に入ると、DNAの発見をきっかけに生命科学が主役の仲間入りをし、まもなく環境が脇役をつとめるようになります。

もちろんフロイトやユングによる精神分析の登場や医学の急速な発達もありましたが、人間、とりわけその身体が主役の座を止めるところまではいたらなかったようです。

人間をめぐる科学と技術は、いささかその「異常」や「病気」を問題にしすぎたのかもしれません。もちろん生きたままの人間を科学の素材として扱うことにも限界があったのでしょう。また自動車や家電製品、ケータイ電話やヘッドホンステレオが人間から身体を意識する機会を奪い、身体感覚を希薄にしたのも20世紀の大きな特徴でした。

しかし宇宙や素粒子、そして生命も、直接間接の差はあっても、あくまでも人間の目で見、身体で感じた宇宙や素粒子や生命にほかなりません。しかも身体は、外部環境と対をなすもう一つの「環境」でもあります。

人間のからだの再発見こそが、21世紀の科学技術に与えられた大きな役割とさえ思えてきます。