この世界で起こることすべては、いずれ科学で説明がつき、技術で再現することができる、という考え方があります。
もしそれが本当だとしても、実現できるのは遠い将来のこと。
おそらく科学や技術が進歩するほど、世界の謎は深まるばかりという方が、ありそうな未来です。
すでに科学技術によって解決済みとされているテーマにしても、よくよく見直してみれば、落としものや忘れものだらけ。
しかもそれらは、いちばん大切で、しかも日々の生活のすぐそばにあったりするようです。
たとえば、勘や気配や予感をはじめ、合理的に説明されたように思えても、どこか腑に落ちないものは、決して少なくありません。
思えば現代文明はずいぶんたくさんの忘れものをしてきてしまいました。
しばしの間、立ち止まって、あれこれ思い出してみるときが来ているのかもしれません。
来るべき科学や技術の種は、そんな忘れものの中で、見つけられるのを、いまや遅しと待っているのです。
堀場製作所
●勘も創発も、言ってしまえば「想定外」の現象。あらかじめの予測などはできるはずがありません。自然そのものが想定外とさえ言えます。科学技術はもとより、そんな自然に境界条件を設定することで成立しているものです。アインシュタインが世界のイメージを塗り替えたように、境界条件が変わってしまえば、想定外も当然至極ということになります。
●現代文明を支えているのは、ほかならぬその科学技術です。ほんのわずかの想定外であっても、簡単には対応できません。太陽の活動がごくわずかに活発になるだけで、現代最先端の科学技術は役に立たなくなってしまうはずです。重要なのは、マニュアルやシステムでは対処できない多様な想定外があり得ることを、想定しておくことなのでしょう。
●災害や自然の変化はともかく、何ごとも想定内になってしまったら、世界が退屈になることは間違いありません。予想通り、予定通りにいかないのは、善し悪しはともかく、人生の醍醐味でもあります。